α-ケンタウリ星通信

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『月長石』(コリンズ)


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物語とは不思議なもので、おもしろいのと退屈なのが一つの物語に共存してたりする。ここはよかったけどあそこは駄目だったなんて僕ら普通に言うけれど、総体としてどうかと言われると、はてと困る。果たして物語を部分にわけたときの評価をただ平均するだけでいいんだろうか。部分どうしを合わせて一つの物語ととらえることで、それはもはや部分の物語とは別の物語となってしまわないだろうか。
 
 本書『月長石』を読んで僕はそう思ったのだが、これ以上考えは進まないので一旦中断。
 
 『月長石』はウィルキー・コリンズによる長編(一応)推理小説である。一応と言ったのはこれが推理小説かどうかを巡ってオジサンたちがめんどくさい議論を戦わしていてよくわからないのだが、創元推理文庫から出てるからね、一応ね。
 
 簡単なあらすじ開始。
インドの月長石と呼ばれる秘宝を巡って悲劇が起きる。
簡単なあらすじ終了。
 
 T.S.エリオットがうんたらとかポーがどうのとか言ってるが、的を得ているのはこの言葉である。
「物語的興味と論理的推理とが一体となった古典的名作」
論理的かどうか言い出すとまたうるさいので置いておいて、物語的興味、まさにこれにつきる。読み始めると前半は少しだるいが、中盤から後半にかけての二転三転するお話の展開から目を離せない。そうくるか……え!次はそう!?え、今度はそっち!?と振り回されること請け負いである。
またこの物語の特徴として、各章が異なった人物の手記という形態をとっているというのがある。個人的には二番目のクラック譲の語り口が非常におもしろい。彼女は宗教にイカれてて、周りの人をなんとか改心させようと躍起になるのだが、ことごとく失敗する。それでもめげずにしつこいところが滑稽で笑わせられた。
ある人の語りではさして重要でなかった人があとになって新たな語りとなって出てきたりして、意外性もある。
 
 こういうお話につきものなロマンスなんかもありまして、非常にエンタテインメンツな作品。おもしろかったです。推理はあるけどたぶんメインじゃねえな。
ちょっと長いけど、「物語的興味」を追えばすぐ読み終われるね。